和彫りの意味や歴史、デザインについて徹底的に解説します。日本だけなく海外でも知名度が高い「和彫り」。日本を代表する伝統的なタトゥーのスタイルです。その歴史は長く、なんと起源は江戸時代まで遡ると言われています。デザインの特徴としては龍、虎、大仏様、般若など、日本の伝統的な図柄をモチーフにすることが多いです。今回は、そんな和彫りについて解説します。
INDEX
和彫りとは? – 日本伝統の刺青(入れ墨)のこと
和彫りとは、日本を象徴する和の図柄を、伝統的な手法で表現された刺青(入れ墨)を指します。力強く描かれたアウトライン(スジ彫りの線)と、ボカシ(墨の濃淡)が特徴的なデザインです。
背中に大きく描かれた和彫りの刺青は、やはり迫力がありますよね・・・
洋彫りにはない独特な味があり、もはや日本が産んだ素晴らしい芸術作品と言っても過言ではありません。海外でも和彫りの知名度は高く、代表的な和彫りの図柄(日本古来のモチーフ)は一定の人気があります。
和彫りを代表とする大きな刺青は、昔(江戸時代)は全て手彫りだったこともあり、かなりの痛みを伴うものでした。そのため、忍耐力・度胸があることを意味し、また威嚇にもなるため、基本的には”任侠の人”のイメージが昔からありました。このイメージは現代の日本でも根強く残っており、反社会的勢力を想起させるのも事実です。ただし、当然ですが和彫りを入れている人 = 全員が反社会的勢力ではありません。
一般的に現代の和彫りは、首から上、手首から下に彫られることはなく、長袖のスーツ等を着ると隠れる部位に収まるようにデザインされます。
和彫りの歴史!起源は江戸時代にあり
現在の和彫りのルーツは、江戸時代中期〜後期にあります。この時代に、今の和彫りのような背中や腕など広範囲に日本絵画チックな華やかなデザインの刺青が流行しました。
和彫りブームに火を付けたのは、当時大ヒットしていた小説『水滸伝(すいこでん)』と言われています。もともと一部界隈では、和彫りのようなお洒落な入れ墨(彫り物)が流行っていましたが、水滸伝のおかげで大衆にも人気が広まりました。
水滸伝とは?
水滸伝とは、当時大流行していた読み物です。豪傑な主人公が悪徳官吏(悪い役人)を次々と倒して、国家を救う物語です。(いわゆる王道ですね!)
画像のように主人公たちの身体には、大きな刺青(入れ墨)が彫られていたのです!
この水滸伝の影響もあり、背中等に描かれた豪華絢爛な刺青(入れ墨)は「男らしさ」の象徴となり、当時の日本における入れ墨のイメージをガラッと変えました。(入れ墨刑の罪人 or 任侠のイメージから、たくましい下町男のイメージに少しずつ変化)
そして、勇敢な主人公達にインスパイアされた肉体労働の男性たち(飛脚、町火消、大工など)を中心に人気を博しました。なんと、19世紀には肉体労働者は入れ墨がない方が恥という時代もあったそうです・・・
十一代将軍徳川家斉の文化年代(19世紀前半)に入れ墨の流行は極限に達し、博徒・火消し・鳶・飛脚など肌を露出する職業では、入墨をしていなければむしろ恥であると見なされるほどになった。
”和彫り”と”洋彫り”の違い
「和彫りと洋彫りって何が違うの?」
いわゆる“和彫り”と”洋彫り”の線引きについて解説します。
一般的に“和彫り”と言えば、共通して、「力強い輪郭線」「ぼかし」「額(見切り)」が描かれています。これらの特徴を抑えたデザインは、基本的に“和彫り”に該当するでしょう。
しかし、実は奥がとても深く、“厳密な”和彫りの定義については、彫り師さんの間でもしばしば議論が生じる話題です。そして、現在でも明確な答えがあるわけでなく、彫り師さんによって意見が異なります。(ゆえにナーバスな話題なのです・・・)
例えば・・・
- “伝統的な和彫り”と、”現代的な和彫り”の違いとは?
- 伝統的な和彫りとは、スジ彫りもボカシも、全て手彫りでないといけないのか?(どこまでマシンを許容できるのか?)
- 和彫りのモチーフを、洋彫り技法も用いて描いたのものは、”和彫り” or “洋彫り”のどっち?
たしかに江戸時代に発祥した伝統的な入れ墨は、すべて”手彫り”でした。しかし、当時とは異なり、現在はタトゥーのマシンが普及しています。加えて、グローバルになったことで海外にも和彫りの需要が増えてきました。(また、インクも日々進化していますしね・・・)
これらの時代の流れであらゆる技法で描かれるようになり、明確な線引きが難しくなったと考えられます。
繰り返しにはなりますが、”和彫りの定義”は人によって異なります。ゆえに、自分の好きなデザインを入れるのがベストではないでしょうか?
“和彫り”は、タトゥー?刺青?入れ墨?
和彫りの呼び分けについても解説しておきます。
「和柄(和彫り)→ 入れ墨・刺青」「洋柄 → タトゥー(TATTOO)」のように、“入れ墨・刺青”と”タトゥー”はよく区別して呼ばれることがあります。しかし、下記の通り呼び方には違いはありません。
また、日本の伝統的な入れ墨を和彫りと呼ぶのに対して、欧米における入れ墨の呼び名であるタトゥー (tattoo)を洋彫りと呼び分けている場合もあるが、両者に本質的な違いはなく、図案や描画の技法に違いがあるのみである。
ゆえに、和彫りを”タトゥー”と呼んでも伝わりますし、トライバルなどの洋柄(洋彫り)を”入れ墨”や”刺青”と日本風に呼んでも問題はありません。もちろん彫り師さんにも伝わるかと思います。(文脈で察するかと思います。)
しかし、こちらも個人の価値観によって異なります。やはり刺青とタトゥーを区別する人もいます。
ただし、歴史的に見ると「入れ墨」という言葉は、江戸時代に罪人の刑罰して彫られたデザインである「入墨刑」が語源だと言われています。一方で、自主的に彫ったオシャレな和柄のデザインは「彫り物」と呼ばれていました。
和彫りのデザイン – 代表的な図柄と、その意味を解説
代表的な図柄のデザイン・その意味について解説します。
ただし、前述しましたが和彫りの定義は人によって異なります。以下で紹介する画像は、マシン彫りや洋彫りの技法で描かれた作品も含みます。あくまで参考までにご覧ください。
※Instragramアカウント:japanese.inkさんから画像の引用をしております。アーティストさんの情報は、投稿内のコメントから確認することができます。
龍
龍(ドラゴン)の意味は、主に「皇帝(王者)」「立身出世」「神力」「守護」などと言われています。特に昇り龍は、立身出世のシンボルとしても有名です。
鳳凰
美しい羽根を持つ伝説の鳥である鳳凰。「優美」「崇高」「平和」「夫婦円満」などのシンボルです。
麒麟
仁徳のある君主が産まれたときに、姿を現すと言われている伝説の霊獣です。「信義」「平和」「守護」「得」
虎
「龍虎」の言葉が示すように、虎は伝説の龍と対等に並ぶほど強大な力量の象徴でした。主に「勇敢」「武勇」「権威」などの象徴として扱われます。
鯉(コイ)
登竜門の「鯉の滝登り」など有名なエピソードが多い鯉。図柄として「立身出世」「飛躍」「成長」「生命力」「長寿」などのシンボルとしても有名です。
金魚
夏の風物詩である金魚!鯉(コイ)と同様に和を感じさせる日本の魚です。その名前の通り、「金運上昇」「富」「商売繁盛」のシンボルです。
蛇(ヘビ)
脱皮を繰り返す蛇は霊妙な生物として扱われることがあります。図柄の意味としては「再生」「豊穣」「霊性(霊力)」などの象徴と言われています。またウロボロスは上記に加えて「永遠」の意味を示します。
鬼
日本で一番有名な妖怪である鬼。妖怪なので一見すると悪いイメージが強いですが、物語によっては善良だったり、神様だったり鬼の設定は様々です。「力強さ」「怒り」などのシンボルで扱われることがあります。
天狗
長く太い鼻に、赤い顔の天狗。日本の妖怪です。こちらも鬼と同様にストーリーによって妖怪としての役割が異なることが多く、図柄の意味も一概に定義されていません。ただ、wikipediaによると一般的には人を魔道に導く魔物されているようです。
般若の面
般若面とは鬼女の能面であり、「嫉妬」「恨み」「怒り」が篭った女の顔とされています。シンボルの意味よりも、迫力のあるデザインが好まれています。たしかに独特の威圧感がありますよね。
仏像
不動明王、千手観音、阿弥陀如来と有名な仏像も和彫りの定番モチーフです。もちろん意味は仏像によって異なります。(タトゥーのモチーフになるほど有名な大仏には、守護本尊という特別なご利益があります。)
タトゥーを隠したい場合は・・・
人生何があるか分からないですし、いざタトゥーを入れた後、やはり年に数回は隠さないといけないシーンが訪れるかと思います。
タトゥーを隠したい場合、ファンデーションシールというアイテムがあります。衣類やサポーターで隠すのもOKですが、最近ではこのような製品もあるのを覚えておきましょう。※肌の色味 / タトゥーの濃さによっては不自然になっちゃうときも・・・。ただし、手軽に目立たせなくできるため、状況によって使い分けてくださいね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
江戸時代から今に至るまで伝承されてきた和彫り。もはや日本の伝統的な芸術作品と言っても過言ではありませんね。日本の刺青文化は、和彫りをなくして語ることはできません。
今でこそカジュアルな洋柄のタトゥーも人気ですが、これから先もずっとずっと継承され続けるべき日本の伝統ですね!